「同盟の転機」という題名の本が日経BPマーケティングから出版されました。著者はニューヨークにあるジャパンソサエティの理事長であるジョシュア・ウォーカーさん。彼は自称「道産子アメリカ人」。正確には北海道生まれではないのですが、生後すぐに宣教師をされていたご両親と共に北海道に移住し、そこで高校まで過ごした後、リッチモンド大学を卒業してイエール大学で修士、プリンストン大学で地政学博士を取得、アメリカ国務省と国防省に勤務後、ユーラシアグループでグローバル戦略部長兼日本部長を務めた後2019年より理事長に就任された新時代の知日派です。
ジョシュアさんが理事長を務めるジャパンソサエティはニューヨーク国連ビル近くにあり、日本酒輸出協会が毎年イベントを開いているのでも知られています。1907年に日米の人々により相互の理解・感謝・協力をもたらすことを目的として設立されたアメリカ合衆国の非営利組織です。太平洋戦争では活動中断を余儀なくされましたが、戦後あのジョン・ロックフェラー3世の大きな寄付を受けてジャパンハウスが建設され現在に至ります。
トランプ大統領が就任後(本当はそれ以前から)アメリカが変貌し、日本もこれまでの「アメリカにただ頼るだけの対米対策」から変化を要求され困惑が広がっている中で、大統領と首相の信頼関係や政府と政府の折衝による日米関係の構築だけに頼るのでなく、市民を巻き込んだ姉妹都市交流や企業の進出などによる多面的な交流の必要性がますます増えてきたことが述べられています。
実はここに獺祭のことが書かれているんです。1980年代のまさに他国であるアメリカを侵略する外国ブランドから脱却し、アメリカに根付き経済的な地元化を果たしつつあるトヨタに始まり、気候変動に対応するイノベーションを生かして文化的にアメリカ社会に関与しようとするダイキン、そして地政学で規定される関係ではなく味わいや経緯、そして将来のビジョンを通して、人々が分断されがちな現代に、きわめて人間的な何かを提供している、と伊藤園と並んで獺祭も挙げていただいています。
さらに獺祭について、日本の酒造会社が、世界最高の清酒をアメリカでも造れることを示し、世界中に提供できると考えたその発想自体が日本が世界に示したソフトパワーである。と、えらい褒めようの取り上げ方です。
獺祭にとっても、「なんでアメリカ、それもニューヨークに酒蔵を造ったんですか?」と聞かれることも多いのですが、私がそういう時にお答えしている内容を、もっと分かり易く、もっと深く、もっと広いところの視点で著していただいています。
日本酒業界から見たとき獺祭が異質なので「獺祭って、四季醸造ってところですでに終わってますよね」と、ある雑誌の敏腕編集長はかねがね周囲に漏らしていたそうです。この言葉に代表されるように、酒蔵を縮める努力は称賛されて、酒蔵を伸ばすことは「売り上げを伸ばすことしか考えてない成功の亡者」のように一部にみられている節があります。
この地酒業界に特に顕著な考え方に違和感を持ってきました。まず一つは個々の酒蔵の「酒を売るための方便」にしか見えないからです。これだと日本酒は「伝統産業」から「伝承産業」になってしまい、それは「地域に伝わる伝承産業」に昇華され、世界の中の「辺境の日本」の地域に埋もれる将来しか見えないからです。これだと酒蔵は生き残るかもしれませんが日本文化そのものに対してもインパクトをもたらさない。
獺祭は日本の「手間をかける酒造り」を通して世界に日本の歴史風土からきた日本の文化を紹介し、それにより日本の文化の存在価値を世界に知らしめ、それにより、日本が世界にそして米国に寄与できるものがあると考えています。そのためには売り上げも健全に成長しなければならないのです。資本主義社会に、そして民主主義社会に日本がそして私たちが生きようとするとき。
獺祭は以前は「山口の山奥の小さな酒蔵」と自称してきました。ある時から「山口の山奥にある酒蔵」と「小さな」という言葉を外しました。
「仕方ないじゃないか」とおっしゃる酒蔵の皆さん、自分なりのスタイルで良いと思いますから成長を目指しましょうよ。でないと皆さんの酒蔵の従業員がかわいそうじゃありませんか。皆さんがファイティングポーズをとるとき、日本が変わると思います。変革は、アジアの、一角の、日本の、「地方」から。皆さんの手で。
と、言うことで、本の宣伝です。獺祭が取り上げられているからというだけでなく、今日の日米関係、そしてこれからの日本の進むべき道を考えるとき、読むべき本と思います。ぜひ、アマゾンでポチって下さい。
