獺祭 DASSAI MOON

JP

EN

月で造る酒は、どんな味がするのだろう。

獺祭MOONプロジェクトとは

株式会社獺祭は、将来の月面における生活の質(QOL)向上を目的とした、月面での酒蔵建造と獺祭の醸造を目指す「獺祭MOONプロジェクト」を2024年より始動しました。2050年の獺祭月面醸造を目指し、その第一歩として、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟の月面重力模擬環境下にて世界初となる宇宙空間での清酒の醸造試験を実施します。

詳細記事はこちら
  1. 2024年

    獺祭MOONプロジェクト始動

  2. 2025年

    獺祭MOONプロジェクトの第一弾として宇宙空間での清酒造りに挑戦

  3. 2050年

    月面での獺祭製造

なぜ、宇宙で獺祭を造るのか

2040年代に人類の月面への移住が実現する場合、長期間を月で暮らす中で「酒」は生活に彩りを与える存在になると考えています。ワインの原料であるブドウは水分を多く含むため重量が増しますが、日本酒の原料である米は軽く、月まで輸送しやすいという利点があります。
将来的には、米と、月に存在するとされる水を使い、月面で獺祭を造り、月で暮らす人々の生活にも獺祭が寄り添いたいと考えています。

宇宙醸造への挑戦

人類初、宇宙空間での
清酒醸造試験

月面での獺祭製造に向けた1つ目のマイルストーン「獺祭MOONプロジェクト~phase1~」として、ISS「きぼう」日本実験棟での醸造試験を、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のきぼう有償利用制度を活用し実施します。日本酒特有の並行複発酵技術の概念実証を目的に、三菱重工業株式会社との共同で人類初となる宇宙空間での清酒醸造を目指します。
本ミッションは、種子島より国産ロケットH3、国産補給機HTV-Xを使用してISSへと打ち上げられ、軌道上での作業は日本人宇宙飛行士が担当を予定します。また、獺祭と三菱重工を中心に開発やISS運用において様々な日本の関係機関・企業等との連携のもと取り組んでおり、オールジャパンの技術力で臨む挑戦となります。

「獺祭MOONプロジェクト
~phase1~」の流れ

Step 1.ミッションの策定

月面での清酒製造の概念実証のため、ISSの「きぼう」日本実験棟に設置されている細胞培養追加実験エリア(CBEF-L)の人工重力発生機を使用して、月面重力(1/6G)模擬環境下で試験を実施します。
地上からは清酒の原材料として、α化米、乾燥麹米、乾燥酵母、水の4種、そして三菱重工が開発する宇宙専用の醸造装置をISSへと送り込みます。醸造装置は水が注入されることで全ての原材料が混ぜ合わさり、発酵が開始する仕組みになっています。

宇宙醸造の試験機器

開発中の醸造装置のプロトタイプ

Step 2.打上げ

原材料と醸造装置は、2025年10月21日(火)10時58分頃に種子島宇宙センターからISSへと打ち上げます。ISS到着後は、宇宙飛行士により醸造装置がセットアップされ、水を注入することで、試験が開始します。試験開始後は地上の管制室から自動攪拌とアルコール濃度のモニタリングを行いながら、およそ10日間かけてアルコール度数15%への到達を目指します。発酵を終えた醪は軌道上にて凍結保管し、地球への帰還を待ちます。

Step 3.回収

冷凍された醪は、2026年初旬に宇宙から帰還を予定します。アメリカ洋上に着水した後、獺祭のもとに運ばれ、解凍し、醪の半分は絞って清酒100mlに仕上がります。この清酒は「獺祭MOON-宇宙醸造-」として、国内の宇宙事業への寄付を目的に1億1000万円(税込み)の価格で販売されます。残り半分の醪は、世界初の宇宙で造られた醪サンプルとして、酵母の解析や各種成分分析がなされ、今後の宇宙開発のために役立てられます。

月に酒造を建てる 第一歩として、 宇宙空間で酒を醸します

株式会社獺祭 代表取締役社長 桜井一宏の画像

月への移住計画が新しい局面を迎えているというニュースを、私たちは興味深く受け止めています。米国NASAが推進する「アルテミス計画」、中国の「嫦娥計画」、あるいは日本のベンチャー企業も月での人類の持続的な活動をめざしています。何十年後になるかはわかりませんが、月に街が生まれて、そこで人が暮らすことになったら─。
もし月においしい酒があれば、月に暮らす人々のクオリティ・オブ・ライフが上がるのではないかと想像します。月に向かうのは、ストイックな求道者のような人ばかりとは限りません。私たちと同じように、おいしい酒でリラックスしたり、笑顔になる人も多いはずです。
だったら、いまのうちから月面で酒をつくる準備をしておきたい。私たちは、そう考えました。はたして、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟で醸造の試験を行うことが、JAXA(宇宙航空研究開発機構)より承認されました。ISSで醸造の試験を行い、200mlを地上に持ち帰る予定です。200mlのうち100mlは分析にまわしますが、100mlを私たちの取り組みに賛同し、応援してくださる方に購入していただきたいと考えています。なお、私たちからの出荷額は全額、今後の日本の宇宙開発事業に寄付いたします。
人類ではじめて月面に降り立ったアポロ11号のニール・アームストロング船長は、「これは一人の人間にとっては小さな第一歩だが、人類にとっては偉大な第一歩である」と述べました。獺祭も、未来に向けた第一歩を踏み出す所存です。はじめの一歩を私たちとご一緒してくださる方がいるのならば、これに勝る喜びはありません。

株式会社獺祭 代表取締役社長

桜井一宏の署名

獺祭の研究室が、 国際宇宙ステーションと つながる

製造部 イノベーション研究室 主任 植月 聡也の画像

宇宙空間で酒を発酵させるプロジェクトの責任者を務める植月聡也は、学生時代は生命科学を専攻したという。「具体的には、とある疾病についての研究をしました。なぜその病気が発症するのかというメカニズムを解明して、その治療薬を開発をするための足がかりを発見することが研究の目的でした」
研究者として生きる道も考えたという植月であるけれど、彼には「世界一になりたい」という野望があった。「研究者として世界一になるのは少し難しいかもしれないけれど、日本一の酒をつくっている獺祭で蔵人として働けば、世界一の酒を生み出すことができるかもしれない。そう考えて、獺祭の蔵人になることを決めました」
植月が本プロジェクトのとりまとめ役を担うようになった理由は、生物にまつわる現象を原理的に理解できる、というバックグラウンドがあるからなのだ。ただし、3年前にこのプロジェクトに携わると、次から次へと難題が押し寄せて来たという。「ISSというのは完全な閉鎖系で、実験でなにかが起こるとだれも宇宙飛行士を助けることができません。したがって、この実験は安全ですということを、管轄しているNASAに証明する必要があります。日本酒には長い歴史がありますが、宇宙空間で醸造したという知見はひとつもありません。そこで、日本酒の醸造過程で生じる生成物のリストをつくり、すべてが安全の基準を満たしているというデータを提出しました。まず、安全性を証明する過程が難関でした」
続いて、実験装置を開発するというタスクが植月に課せられた。
「ISSで行う実験の内容は私が担い、装置の開発は三菱重工と共同で行っています。三菱重工は古くから宇宙事業に取り組んでいらっしゃるので、ノウハウをたくさんお持ちです」
ISSは微小重力状態なので、まず、遠心力を用いて地球上の6分の1という、月と同じ重力にすることから実験ははじまる。「地上から蒸米を乾燥させたアルファ米や乾燥麹といった原料を送り、この装置に入れます。そして宇宙飛行士にも協力していただき、この装置に水を入れて発酵するかどうかを確認します。ISSの貴重な電力とスペースを使うことから、できるだけシンプルな装置にする必要がありますが、ここに各種データをモニタリングする機器を備える予定で、発酵の様子を地球からもチェックできるでしょう」
アルコール分15%まで発酵すれば、月面で酒を醸造する可能性が高まるということになる。試験後、“酒”は冷凍され、回収機に搭載されて洋上に着水する。
「現時点でのシミュレーションでは発酵するはずですが、あくまで机上の計算なので、こればかりはやってみないとわかりません。だからこそ、試験をする意味があるわけですが…」
世界一の日本酒をつくるために獺祭の門を叩いた植月。もしこの試験がうまくいけば、世界ではじめて宇宙空間で日本酒を醸した蔵人ということなる。少し形は異なるけれど、世界一の夢がかなうのだ。

引用:冊子「獺祭MOON」カーグラフィック社

製造部 イノベーション研究室 主任

植月 聡也

最新情報

2025年10月21日に種子島より打上げを予定している国産新型ロケット H3ロケット7号機に、宇宙用醸造装置と獺祭の原材料の搭載が決定

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)が、2025年10月21日に種子島より打上げを予定する国産新型ロケット H3ロケット7号機に、獺祭 MOONプロジェクトで使用する宇宙用醸造装置と獺祭の原材料が搭載すると決定しました。国際宇宙ステーション(ISS)への輸送には、本打上げで初実証となる国産の新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)を使用、そして、ISSの「きぼう」日本実験棟での醸造試験は油井宇宙飛行士に作業していただくことを目指してJAXAと調整中です。